Q.01

ヒヤリハットとは何ですか?定義、語源、ハインリッヒの法則(1:29:300)、インシデントや労働災害との違い、そして厚生労働省の職場のあんぜんサイトでのヒヤリ・ハット事例の位置づけと、事業場でのヒヤリハット活動の目的を、公的な出典つきで教えてください。

ヒヤリハットとは、仕事中に「もう少しでけがをするところだった」場面のことです。 厚生労働省「職場のあんぜんサイト」は、この「ヒヤっとした、あるいはハッとした」経験を取り上げて災害防止につなげるのがヒヤリハット活動だと説明しています。危険有害要因を見つける方法の1つとして効果的、とも位置づけています(安全衛生キーワード「ヒヤリハット」)。結果としてけがや病気が起きていない点で、法令上の「労働災害」とは区別されます。

Approach: 厚生労働省「職場のあんぜんサイト」のヒヤリ・ハット事例集の収録データを集計しました。定義・語源・法則・活動の目的は、同サイトの安全衛生キーワード、都道府県労働局の資料、労働安全衛生法の公式検索結果で確認しています。Web上の記述は検索結果の抜粋に基づいており、全文までは読んでいません。

1. 定義と語源

  • 定義:職場のあんぜんサイトの説明では、ヒヤリハットは「仕事をしていて、もう少しで怪我をするところだった」ことです。
  • 語源:「ヒヤっとした」「ハッとした」という2つの感覚の言葉を組み合わせた呼び方です(同ページ)。兵庫労働局のリーフレットも「仕事中に、ヒヤッとしたこと、ハッとしたこと、危ないと感じたこと」と説明しています。
  • 事例集の個々の事例でも、たとえば「すぐ脇を軽自動車が通過しハッとした」のように書かれています [1]。

2. ハインリッヒの法則(1:29:300)

  • 職場のあんぜんサイトの「ハインリッヒの法則(1:29:300の法則)」によると、これはアメリカの損害保険会社の安全技師ハインリッヒが発表した法則です。同じ人間が起こした330件の災害のうち、重い災害が1件あれば、その裏に軽傷29件と、けがのない事故300件がある、という内容です。
  • 労働局の資料は、この300件にあたるものをヒヤリハット(数えきれない不安全行動や不安全状態)として説明しています。福岡労働局の資料は、ヒヤリ・ハットを放置すると、この法則のとおり休業災害などにつながる、と注意を促しています。

3. インシデント・労働災害との違い

用語公的な位置づけヒヤリハットとの関係
労働災害労働安全衛生法第2条第1号の定義では、就業に関係する建設物・設備・原材料・ガス・蒸気・粉じんなど、または作業行動その他の業務が原因で、労働者が負傷し、病気にかかり、または死亡すること実際に負傷・疾病・死亡が起きたもの。ヒヤリハットは起きる手前で済んだもの
インシデント労働安全の分野では、厚生労働省の公式資料に定義は見当たりませんでした。医療安全の分野では、厚生労働省の医療事故情報収集等事業がヒヤリ・ハット事例を次のように定めています:誤りが患者に実施される前に見つかった事例、実施されたが患者への影響がなかった事例、軽い処置(消毒・湿布など)で済んだ事例、影響が不明な事例用語の範囲は分野ごとに決まっています。社内規程で使うときは、定義を明記しておく必要があります

4. 職場のあんぜんサイトでのヒヤリ・ハット事例の位置づけ

  • 厚生労働省が公開している、実際の職場で起きたヒヤリ・ハットの事例集です。事例は「墜落・転落」「転倒」などの事故の型で分類され、各事例に業種、作業の種類、状況が記載されています。原因と対策が付いている事例もあります。
  • 確認できた範囲では、15分類・449件の事例ページがありました。同じ事例が複数の分類に重ねて載っているため、分類ごとの件数を合計すると451件になります。
分類件数例
01 墜落・転落79屋根の雪下ろし中に墜落しそうになった [2]
02 転倒55濡れたグレーチングの上で滑った。対策は耐滑靴の着用と水分・油分の拭き取り [3]
03 激突16立壁が倒れて足に当たりそうになった [4]
04 飛来・落下49台車が倒れて体に当たりそうになった [5]
05 崩壊・倒壊21(上の04の例と同じ事例が重ねて分類されている)[5]
06 激突され35高圧洗浄車のホースが跳ねた [6]
07 はさまれ・巻き込まれ50ミキサーの刃に巻き込まれそうになった。対策はインターロック [7]
08 切れ・こすれ22食肉スライサーの刃 [8]
09 高温・低温の物との接触15高温の鉄板を素手で触りそうになった [9]
10 有害物との接触25鳥おどし爆音機の音 [10]
11 交通事故26車の誘導中にはねられそうになった [11]
12 動作の反動・無理な動作20運搬中に振り返って背中に違和感 [12]
13 感電・火災29電源を切らずにアーク溶接機を点検した [13]
14 破裂2タイヤのサイドリングが吹き飛んだ [14]
15 その他7傷んだ排水蓋を踏み抜きそうになった [15]

5. 事業場でのヒヤリハット活動の目的と運用

  • 目的:けがに至らなかった「ヒヤリ」「ハッ」を集めて災害防止につなげることと、作業に潜む危険有害要因を把握することです(職場のあんぜんサイト)。兵庫労働局は、ヒヤリハット活動をリスクアセスメントに活かす進め方を示しています。
  • 長続きさせる条件:報告する側にも受ける側にも名誉なことではないため、報告した労働者を責めないという取決めを作り、守ることが必要とされています(同サイト)。
  • 運用:朝礼などで報告するよう意識づけをします。改善した事例は社内報などで広く共有し、他の職場への水平展開と意識の向上につなげます(同サイト)。新潟労働局は、実際の事例に加えて「想定ヒヤリ」も報告する制度の導入例をひな型として公開しています。

Sources:

Q.02